
凡人の私が叶えたい、人と組織の良いカタチ

「負けず嫌い」を育てた幼少期
親の仕事の関係で、0歳から8歳まで、愛知県の山奥で暮らしていました。
通っていた小学校は、全校生徒わずか90人。廃校寸前の小さな学校です。
近所に住む子どもは、2歳上の姉とその友人、そして私より体格の大きな同い年の男の子の3人だけ。
今思えば、2歳の年の差なんてたいしたことはありませんが私にとっては“巨人”のように見えました。
世間から切り離されたようなその村で、この3人が私にとって世界のすべて。
少し大人びた彼女たちが一足先に買ってもらった自転車で山の中を駆け回るのを、私は顔を真っ赤にしながら必死に走って追いかけていました。
走っても走っても、追いつけない。
ピアノも、書道も、勉強も。何をやっても、なかなか勝てない。
そのたびに少しずつ気付いていきました。
——ああ、私は“凡人”なんだ。
「勝つためには、人の何倍も努力をしなければいけないんだ。」
その頃から、自然と「誰よりも努力すること」を自分に課すようになりました。
小学校・中学校・高校と、勉強とスポーツに全力で取り組みました。
最初はできなくても、特別な才能がない自分でも、続けていけば必ず形になる。
その手応えが、私にとって何よりの自信になりました。
高校では塾に通わず教科書だけで受験勉強に挑み、東京大学教育学部に現役で合格しました。
「組織」の難しさを知った大学時代
大学では、150人規模のダンスサークルに所属し、3年生のときに部長に推薦されました。
このサークルでは代々、部員の推薦によって部長が選ばれます。私が選ばれた理由は、「組織への愛と情熱が一番強いから」でした。
その期待に応えるため、「全員の幸せを最優先にした組織運営」を掲げました。
みんなが「このサークルに入ってよかった」と思えるような、温かい“居場所”をつくりたいと考えたからです。
しかしすぐに気づきました。
これまで取り組んできた「偏差値」や「順位」のように、明確な指標や正解がある世界とはまったく違うということを。
勉強やスポーツでは、努力が成果に直結します。
単語を覚えれば昨日より賢くなり、体を鍛えれば確実に結果が出る。そうした“確実性”の中で、私は安心できていました。
けれどサークル運営は違いました。
良かれと思って下した判断が誰かを傷つけ、誰かの笑顔の裏では別の誰かが泣いている。
人と人との交差点の中で、「人間の奥深さ」に直面し、「自分の想像力の限界」に何度も打ちひしがれました。
象徴的だったのが、最後の卒業公演です。
みんなで決めた唯一のゴールは、「自分たちが楽しむこと」。
見に来てくれるのは主に友人や家族で、オーディションでもコンテストでもありません。
だからこそ、“楽しむ”ことを第一の目的にしたのです。
しかし、それは同時に、メンバー一人ひとりが思う「最高の公演像」をすり合わせる作業でもあります。
意見をまとめるのは簡単ではなく、「本当はこうしたいけど我慢した」という人もいれば、どうしても折り合いがつかず、途中で離れていったメンバーもいました。
——卒業公演は無事に終わりました。
多くの人に「楽しかった」「感動した」と言ってもらえたので、きっと成功だったのだと思います。
でも、私は「全員が幸せだったわけではない」ことを知っています。
多様な価値観が共存する中で、どうすれば全員が納得して過ごせたのか、どうすれば、みんなが幸せに、楽しく活動できたのか。
その答えを、最後まで見つけることはできませんでした。
そんな未消化の想いを抱いたまま、舞台の幕は静かに下りていきました。
問いを抱えたまま、次のステージへ。そして出会ったcircus。
卒業公演を終え、ダンスサークルを引退しました。
すでに教育業界への就職が決まっていましたが、どうしても心の中に残った問いがありました。
“全員が幸せ”な組織は存在するのだろうか。
もしあるなら、どんな姿をしていて、どんな人が設計し、そこで働く人々はどんな顔をしているのか。
「組織のあり方」についてもっと深く向き合いたい。
その想いに蓋をすることができず、人材業界、かつベンチャー企業に限定して就職活動を再開しました。
人材業界であれば、「人」にまつわる課題に多角的にアプローチできると考えたからです。
公務員や大手企業を選ぶ学友が多い中で、ベンチャー企業を志す選択に驚かれることもありました。
しかし、私にとってはその反応のほうが不思議でした。
そもそも私が教育学部を選んだのは、学校教育の“画一的なカリキュラム”に違和感を抱いていたからです。
人にはそれぞれ異なる成長スピードがあり、努力次第でいくらでも変われる。
それなのに、「出る杭は打たれ」「ついていけない人は置いていかれる」、今の一律の教育では、人の可能性を引き出せないと感じていました。
そんな時に出会ったのが、circusです。
──「良い会社に入りたい人ではなく、良い会社をつくりたい人を募集」
この求人キャッチコピーを見た瞬間、「ここだ」と直感しました。
選考に進む中で
新卒一期生の募集であること
研修では全ての部署を巡り、会社全体を理解できる機会があること
ということを知り、この一人ひとりに合わせた研修プログラムなら、自分の行動次第でキャリアも組織も変えていける。
まさに、私がずっと求めてきた環境だと感じ、入社を決めました。
正解のない世界で、選んだ道を正解にしていく。
9月で研修期間を終え、10月から仮配属期間に入りました。
入社当初は、人材開発系の仕事に携わることを目指し人事部への配属を希望していましたが、研修で全ての部署を回るうちに考えが変わりました。
circusには、まだ活かしきれていないデータやノウハウが多く存在しています。
「このリソースをもっと有効に活かせたら、会社全体の成果や働きやすさにつながるのでは」と考えるようになったのです。
“人を活かす”ということは、個人への支援だけでなく、 組織全体の仕組みや環境づくりからも実現できる。従来描いていたキャリア以外のアプローチもあると思い、営業企画を志望しました。
──「自分は凡人だ」。それを悟ったあの日から、私は努力することをやめたことはありません。
努力すれば報われる世界もあったし、報われない世界もありました。
組織運営も、単語を覚えれば点数が上がるような、明確な正解がある世界ではありません。
でも、難しいからこそ、私は誰よりも努力することを自分に課し続け、その積み重ねの先に、「全員が幸せに働ける組織」のカタチを見つけたいと思っています。
※所属・役職はすべて取材当時(2025年10月時点)のものです。